Thun(Bern州)に誕生した
巨大な木造建築「拳精館」(けんせいかん)

 

 ベルナー・オーバーランドの入口トゥーン。ベルンとルツェルンを足して2で割ったような雰囲気の町。木橋があれば、アーケードのブティックも楽しめる。トゥーン湖岸からは周遊船が発着し、遠く名峰ユングフラウ、ムンヒュ、アイガーを望める美しい土地。

 このトゥーンにもうひとつ、とてつもない名所ができ上がった。トゥーンの町外れ、Allmendingenに造り上げられた巨大な木造建築がそれ。スイス最大規模の木造建築(奥行き16m、幅53.5m、高さ18m)。建物を支える太い柱は9m、直径1.2mのもの。


拳精館正面玄関、太い柱が訪問者を圧倒する。

 このとてつもない計画を実現したのは、ハンス・ミュラーさん。空手の先生である。立派な道場を建てるのが夢だった。かつて奈良の東大寺、京都の清水寺などを見てショックを受け、計画を開始。しかし、構想は出来ても、長い間設計士に巡り会わなかった。ところが、空手の修行で日本に行った折、休暇を利用して出かけた札幌で、日本の建築士と電撃的な出会いがあり、一挙に具体的な計画へと準備開始。しかし、そんな冒険のような計画に資金の貸付をしてくれる銀行は簡単に見つからないまま歳月が流れていく。ところが、このハンス・ミュラー氏には、不思議なパワーが備わっているのか、とうとう資金繰りもでき、いよいよ計画に着工。柱、梁用の大木を自ら選定し、伐採するという念の入れよう。建物のメインとなる空手道場の梁は何と長さ16m、直径1.2m、重さ3.6トンにもなる丸太。それが何本となく使われている。建物全体で57の柱が使用され、全体で1600・に達する。

 さらに驚くのは、この建物を立てるために、実弟で大工のアドリアンさんがはるばる日本へ出かけ、8ヵ月間宮大工の修行を積むという入念さ。

 この和洋折衷の神殿風建築、建物を取り巻くようにゴルフ場ができる。 1階はゴルフ場のレストラン、 2階がハンス・ミュラー氏率いる空手道場、 3階にはメディテーションやWutan(太極拳、気功、カンフーetc)などの道場。さらに分譲マンションと多目的建築になっている。

 ハンス・ミュラー氏がこの土地を手に入れたときには、まだ道もなく、名前を選ばなければならなかった。ちょうどこの近くには、昔ケルト人の神殿のようなものが幾つもあったそうで、現在の建物はそのライン上にあり、パワーを感じる不思議なことが起こったりするらしい。そこで、道の名前を「Tempelstrasse」と命名。ハンス・ミュラー氏自身、パワーの持ち主なのか、撮った写真を見ると姿がハッキリ見えない(?!)。

 最近になってようやく建物内の自分たちの住居に落ち着いたが、それまで、キャンピングカーでの寝起きの毎日だったと言う。何でもなかったように笑ってそのことを話してくれたハンスさんの妻Misaさんの内助の功は涙ぐましい限り。


2階の空手道場正面、パワーのせいで
ハンス・ミュラー氏の姿がとらえ切れなかった!?

 

問い合わせ先は、
Hans & Misa MULLER
Tempelstrasse 20
3608 Thun
Tel (079) 206 1371


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